オボエテタンゴ

2018-09-12レジリエンス

手術日が決まってから、あれやこれやと猛烈に忙しかった。

予備校の休学届は、前々月末が締め切りだったので間に合わず。

先生方に事情を話したら入院ギリギリまで

みちみちに振り替え授業を入れてくださった。

いやはや、ありがたいのだけど

3コマ通しって、6時間なのだけど

私の脳みそ、もつかしら!?


そして突然、洗濯機が壊れた。

この猛暑で洗濯物山盛りだというのに!?

もう10年以上使っているから、買い替えてもいいのだけど

納品よりも修理の方が早かった。

それに新製品を検討する判断力がなかった。

今、大物の買い物は危険だよね。

直るまでの数日間、近所のコインランドリーへ

自転車で何往復しただろうか?

暑いよぅ、暑いよぅ。


そんな中、薬剤師による問診。

アレルギー、常用薬の有無の確認を受け

サプリメントや青汁は、退院まで停止となった。

続いて麻酔科医による診察。

全身麻酔って、すやすや寝ている訳じゃないのね。

自発呼吸が止まるので、人口呼吸が必要なのね。

気道確保の挿管のため、口が大きく開くか?

歯がぐらついていないか?などをチェックされた。

事故などで緊急手術の時、口が硬くて挿管しにくい場合は

その場で歯を折ったり、抜いたりすることもあるんだって!

ひえーーー(;゚Д゚)

ワ、ワタシ、顎関節症なんですけど、大丈夫でしょうか!?


「あーんして!OK!いけるいける!」

「なるべく、んがっ!って開けないようにしますからね~」


ノリのよい麻酔科医であった。

手術当日はやさしめに開けてください。


しかし外出続きで予習、復習が追い付かない。

課題のレポートも家事も溜まってゆく。

主婦としての通常業務が滞ってきたので

子どもたちには、入院直前に母の病気を話す予定だったが

中3の娘には、先行で知らせることにした。

病院からもらったガイドラインに沿って

包み隠さずに検査、入院、手術、治療の過程を話すと

さすがに「ガン」という言葉には驚いていたが

すぐにフムフムと納得したようで


「じゃあ、お母さんがんばらないとね!」

「この夏、私の家事スキルが上がるわね~」


我が子ながら見事に落ち着いていた。

前々から思っていたが、この子はいつの間にこんなに大人になったのだろうか?

これまでも二人で話していると、時々娘であることを忘れて

うっかり大人の事情まで相談してしまいそうになった。

「何でも話せる友達みたいな母娘」って

今時流行っているようだが、それは発達心理学的にあまりよろしくない。

未成年で成長期の子どもに、親の責任や苦労を負わせると

後々になって問題が起こりやすいと言われている。

しっかりしている子。

頼りになる子。

だからと言って、親と同じ土俵に上げてはいけない。


その数日後、中学校で進路の三者面談があった。

受験の話が終わった後、ベテランの女性担任に母の現状を話すと

先生は「お話いただき、ありがとうございます」と頭を下げ

娘に厳しくも温かい励ましの言葉をかけてくださった。

その時、娘が少し泣いた。

久々に見た娘の泣き顔は、幼稚園の頃と同じだった。

あ~、私は母としても

心理士を志す者としてもまだまだだな。

不安にさせてごめんね。


娘が母の身体を気遣ってくれたり

家事をこなしてくれるのは、大変にありがたい。

痛いーー、とか

しんどいーー、とか

母が時々弱音を吐くのもいいだろう。

でも、親の私自身が奥底に抱える気持ちは

娘に悟られないようにしなければと改めて思った。


一方小4の息子は、夏休みに入るなり風邪をこじらせ

発熱1週間、咳2週間以上。

寝室が別でも、息子が咳きこんだら目覚めてしまうし

アイスノン替えたり、水飲ませたり、背中さすったりで

母はもれなく寝不足である。

成長に伴い、最近は父と過ごす時間の方が長かったが

病気になると、やはりおかあさんおかあさんおかあさん。

身体が弱っている時は、気持ちもネガティブになりやすい子なので

結局入院前日まで、母の現状を話すことが出来なかった。


おかあさんは、おっぱいの病気で手術するため

明日から2週間入院します。

その間君は、お父さん、お姉ちゃんと留守番しててください。

退院しても、お薬の副作用でしんどいことがあります。

その時は協力してね!

今まで以上に、自分のことは自分でするんだよ!


「ガン」という言葉は言えなかった。

「ガン=死」と直結し、パニックになるかもしれない。

一度ネガティブな沼にはまると、なかなか抜け出せず

長期間フラッシュバックすることがある子だったから。


母の話を聞いても、ふーん。はーい。

全く関心のない息子。

今はそれでいい。

君はまだ、全部理解できなくていい。

但し担当する家事は、サボらずやりなさいよ!


そして夫。

いろいろ相談に乗ってくれてありがとう。

私の入院に合わせて、夏休みを取ってくれてありがとう。

家族の支えのありがたさを、しみじみ感じてるよ。

あなたと結婚して良かったよ。

が、しかし!

このタイミングで、泊り仕事から

風邪ひいて帰って来るとはどういうことだ!?

息子もまだ治っていないのに!

もし私も罹患して発熱したら、手術が延期になってしまうやんけ!


昼夜を問わず、家中にこだまする男衆の咳きこみ。

最大限の予防策と気合で乗り切る母と娘。

あぁ、今夜もレポート書けない、、、

しかし心理の授業で、とても良いことを学んだ。


◎レジリエンス(resilience)

元々は環境学の用語で、自然災害などの後の、生態系の回復力を指す言葉。

最近では医学界でも使われており、私もうっすらとは覚えがあった。

心理学では「精神的回復力」に近く

困難な状況にも関わらず、うまく回復できる力を意味する。


レジリエンスの特徴は

①自尊感情と正の相関を示す

②ネガティブライフイベントや、苦痛ライフイベントの経験値とは無相関


色々と苦労してきた人は精神的に強いと言われるが

苦労がその人を強くしたのではなく

元々その人の自尊感情が高かったから

苦労を乗り越えられた、という訳だ。

具体例だと、没落した貴族や華族のお嬢様が

無一文になっても逞しく生き抜き

数十年後には生家を復活させる、なんて話

昭和のドラマでよくあったでしょ。

真のお嬢様というのは、どこへ嫁に行っても恥ずかしくないように

甘やかされずにキッチリと育てられ

自尊感情の塊みたいだものね~

(坊ちゃんではあまり聞かないな。謎だ)


そんなレジリエンスの状態にある人の心理的特徴は

①肯定的な未来志向(楽観性)

②感情の調整力

③興味や関心の多様性(思考の柔軟性)

④自己効力感や自尊心の高さ


あれれ?

こんな人、どっかに居なかった?

むむむ?

M子かーーー!?


彼女は私と入れ違いに大阪へ転居となり

初めての関西にビビッていたのも3日くらい。

すぐに地元に溶け込んでいた。

そして3年前に胃ガンを患い、これまたとっとと復活。

以来、私が身体のことで何かグズグズ悩むたび

気持ちに寄り添いながらも、喝を入れてくれる同級生だ。

M子は若いころから超ド級楽観主義で

趣味はスポーツから音楽まで多岐に渡り

ご両親からも、旦那からも、子どもたちからも

愛されていることが良く分かる。

更に医療従事者として現場で揉まれたことで

感情の調整力も身につけたのだろうな。

そんなM子が手術直前、大阪から会いに来てくれた。


「実家に用事があったから、ついでにな~」


なんて言ってたけど

私が告知を受ける前に、えぐえぐ泣いてた頃


「もし黒だったら、会いに行ったるから!」


と、宣言していた。

そうしたら本当に来てくれた。

仕事休んで、夜行バス乗って来てくれた。

も~!惚れてまうやろ!

私が男だったら、絶対嫁にしてるゼ!


ガン患者の先輩として、いろいろとアドバイスを受けた。

今後の気持ちの浮き沈み。

身体の変化。

お金のこと。

家族のこと。

オマケに大昔の恋バナも。

本当に本当にありがたかった。

私もいつか、こんな風に誰かに役に立てるといいな。

それでM子にレジリエンスの話をしたら


「lingもやで。だって私ら、ハマのお嬢やん?」


はっ!?

そうだった!!

M子はすっかり浪速のオカンだけど

私は各地を流れ流れてきたけれど

私たちは生粋のハマッ子でした~!


お嬢様だったかどうかは置いといて(ありえない)

私はこれまでの人生で、自分を卑下したことは一度もない。

父を早くに亡くしてからも

あの母の娘であること、あの祖母の孫であることが

私の支えであり、誇りだったのだ。


「だからlingも大丈夫。すぐ復活するよ。自信持って切られておいで!」


お、おう。

行ってきます!


やっと入院。

長いな~


本日のオボエテタンゴ

好在

hao3zai4

幸いなことに

風邪うつらなかった自分を褒めたい